仏像名

ふりがな ゆいまこじざぞう

興福寺
制作年代

国宝
鎌倉時代

維摩居士坐像

様 式

建久七年(1196)

俗称又は愛称

製作材質

木造、玉眼
彩色

樹 種

像 高

88cm

製作者

定慶作

安置場所

 東金堂

開扉期間

解 説

この像や金剛力士像を制作した定慶も、また運慶の父康慶の高弟の一人。鎌倉初期に活躍した有能な仏師である。
 釈尊在世時、篤信家として知られた維摩居士を刻んだこの彫刻にも、いきいきとした生命感が感じられる。この像では、特に玉眼の効果が充分発揮されている。建久七年(1196)の作である。
「日本の彫刻」 久野健編 吉川弘文館 1968年より

 像内に銘記があって、建久七年(1196)、仏師定慶による造立と知られる。同じ東金堂に安置され、ほぼ同じ頃に造られたと思われる文殊菩薩坐像と一具をなし、維摩経に説かれる病維摩とこれを見舞った文殊菩薩を表わしたもの、老貌の維摩が、眉根を寄せ、口を開いて法論している。
 肖像彫刻として、文治五年(1189)の興福寺南円堂法相六祖像の作風を承け継ぎながら、顔や手の肉身の写実は更に微細な点にまで徹底され、衣の襞はより自然にたたまれ、流動的に整えられている。
 この期の肖像彫刻における、無著、世親像などと異なった方向における完成を示すものといえよう。
 寄木造、玉眼嵌入。彩色は後補か。衣桁形の後屏や獅子や牡丹の浮彫(一部に後補がある)を貼付けた台座に宋風が見られ、宋画の維摩像が手本になった事も考えられる。「運慶と鎌倉彫刻」 小学館 1973年より

「維摩詰所説経」に説かれる、文殊菩薩と法論を戦わせる病気の維摩を表した像で、東金堂本尊像の左右に文殊菩薩坐像と共に安置される。像内に朱塗銘があり、建久七年(1196)三月より五十三日間で定慶が像を造り、その後、五十日間で法橋幸円が彩色を施し、七月五日に西隆寺の仏舎利を籠めて供養された事が判る。
 長禄四年(1460)、には、東金堂の多門天像、十二神将戌像と共に、彩色の修理がされた(台座内墨書銘)。
 頭巾をかぶり、顎髭を蓄えた(下顎に植毛痕がある)老貌に表される点や維摩の居所である「方丈」を意識して台座、光背の荘厳を方形にまとめる点などに、中国南北朝以来の図像的な伝統が継承される。

 右肩を外して袈裟を羽織る点も特徴的だが、これは袖つきの衣を羽織る中国の維摩像の形式が、日本的に受容された結果と思われる。その形状には、和銅四年(711)、の法隆寺塔本塑像以来の、日本における維摩像の主流形式が踏襲される。
 また、脇息を設けずに上半身を直立させる姿は、平安初期の法華寺像と共通する。他方衣桁形の後屏や獅子・牡丹を表した台座の意匠には、新しい宋風が見られるとの指摘がある。
 眉間を寄せた険しい表情には、経典に説かれた維摩居士の深い仏教理解と屈折した性格の両面が巧みに描写されている。その具体的で生々しい表現に、鎌倉彫刻の持つ現実性への指向が端的に表れている。
「興福寺国宝展」 東京芸術大学美術館 2004年 より

私 の 想 い

今日は不在でした。山口の展覧会に出品中との事である。昨日の薬師寺で論議台が二つ揃ってある。向って左側の席が講師の席で、右側が読師という席の並びであった。
 そして、薬師寺では、講師の席に長老が座り、読師の席には中年僧が座った。法華寺の献茶会の席でも同様であった。
 ここの薬師如来の前での並びは、向って左の席に維摩居士さんである。その席は講師の席である。向って右の席に文殊さんが座っている。菩薩よりも居士さんの方が上席に座って居る事になるからややこしい。
 位や偉さではなく、年齢の高い維摩さんに文殊さんが気を使って、先輩に席を譲ったのだろうか。ややこしくなってしまった。答えはまだ出せない。
 右手は右手首を座禅に組んだ右足の膝頭に手の甲を着けて、ジャンケンのチョキを出している。何かの二つを説明しているのだろうか。
 左手は脇を締めて肘を折って前に出し拳を軽く握っている。説明する姿に迫力がある。これには文殊さんも参ってしまうだろう。帽子を冠っているが曲がって居る事も意に介さず論ずる姿である。

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維摩居士坐像
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