仏像名

 もんじゅぼさつざぞう

興福寺
制作年代

国宝
鎌倉時代

文殊菩薩坐像

様 式

俗称又
は愛称

製作材質

木造、玉眼
彩色、截金文様

樹 種

像 高

94cm

製作者

安置場所

東金堂

開扉期間

解 説

 東金堂に安置して維摩像と一対をなす文殊菩薩像。ほぼ同じ頃の作と考えて良いが、必ずしも同一人物の手になるかどうかは、良く判らない。
 台座の獅子や像の衣制はやはり宋風を示しているけれども、張りのある肉付けや衣文の巧みな捌きなどは、維摩像よりはやや上手の作である。
「仏像ガイド」 美術出版社 1968年より

 病気の維摩居士を見舞う文殊菩薩の像である。大袖衣、鰭袖衣、甲冑、袈裟を着け、右手に持物(亡失)を持ち、安坐する姿に表される。
 ことに頭上に梵篋(経典を納める箱)を戴く点や両胸に人面を表す点は特徴的で、その新奇な図像は、宋画に基づくものと思われる。
 京都国立博物館本の興福寺曼荼羅図には、東金堂内に梵篋を戴き、手に如意を持つ文殊像が描かれるが、これが本像に当たるのか、同図の景観年代論と関連して議論となっている。
 台座には、維摩居士坐像と同じく獅子が表されるが、これは経典に説かれる「獅子座来入」のエピソードを意識した表現と見られる。若々しい相貌、丸味を帯びた張りのある体つき、端正で細やかな衣や甲の表現、円を基調とした荘厳具の形式など、その造形は維摩居士坐像との対照が、念頭に置かれている。
 維摩像と同時期に、これと一対の像として、同じ作者によって構想、制作されたものと推測される。
「興福寺国宝展」 東京芸術大学美術館 2004年 より

 興福寺東金堂の木造文殊菩薩坐像は、よく出会う文殊菩薩とは少し印象が異なる。頭上に梵篋(ボンギョウ)という箱状の経典を頂いているのだ。豊かな知識と緻密な思考がぎっしり詰まっているのだろう。いかにも「知識の文殊」らしい姿だ。
 文殊菩薩は立った獅子の背に乗る像が多い。だが、この像の獅子は蓮華座の下支えとしてしゃがんだまま台座の一部になりきっている。普通の文殊のような宝剣も持たない。こんな点も他寺に多い文殊騎獅像とは異色である。
 鎌倉時代の慶派仏師定慶かその周辺仏師の作らしい。東金堂では本尊薬師如来の左(南側)に安置され、対称の位置に国宝の木造維摩居士坐像(定慶作)が座す。維摩経の文殊維摩問答の場を想定した配置と考えられている。
 両像を比べると、弁舌姿の老境維摩に対し、文殊は少年のような凛々しい丸顔。維摩のゆったりした衣に、文殊は胸まで覆う着衣。装飾背板付きの角形台座に座す維摩、光背も台座も円形の文殊。それらの対照も興味をそそる。
 定慶は慶派の祖師康慶に続く運慶や快慶と同世代の仏師らしい。二人ほどの華やかさはないが、当時伝来した中国宋の技法を採用し興福寺などで活躍したようだ。代表作は維摩像。文殊像には定慶の記名はないが、定慶と同じ宋風技法が所々に見られる。
 文殊菩薩は普賢菩薩とともに釈迦如来の脇侍として、通常の釈迦三尊では中尊の左に位置する。釈迦の知恵を象徴するのが文殊、慈悲を象徴するのが普賢とされる。
 独尊としての信仰も盛んで中国山西省の五台山が霊地として有名だ。日本では平安前期に貧民救済などを願う勅命の文殊会が始まった。中世には行基を文殊の化身とする信仰が高まって生駒山麓に竹林寺が整備され、行基を尊崇する奈良西大寺の中興叡尊やその弟子忍性らが文殊信仰を広めた。
 文殊菩薩を本尊とする寺は各地にある。入試合格や子供の成長を願う参拝者が多く、観音、地蔵と並んで現代人になじみが深い。この東金堂像はその美術史的価値の最高峰といえる傑作である。
「探訪 古き仏たち」より 朝日新聞 2013629

私 の 想 い

左足前の降摩座の組み方だが、足が組み上がっていないで左足が前に出されている。だらしない組み様である。
 若い青年僧といった感じの風貌であるが、これでは維摩さんに適わない。迫力が感じられない。
 右手は肘を右太腿に置き、軽く握った拳を下に向けている。左手は親指と人差指を伸ばして、手の平を上に向けている。ポーズで何を物語っているのか判らない。
 これでは手の表情からも、顔の表情からも迫力に欠ける。また、お連れの者も欠いているので、知恵不足になってしまうのではと心配になる。
 袈裟の下に冑を着けた姿である。壇で判らなかったが獅子が蓮華座の下に居りました。

文殊菩薩坐像画像一覧その1
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興福寺東金堂所蔵の仏像
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興福寺1(北円堂)
興福寺2(東金堂)
興福寺3(仮金堂)
興福寺4(国宝館)
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